2015年11月11日のツイート

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
〔仮説社PublicRelations〕No.210
2015年11月11日
http://www.kasetu.co.jp/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

★目次★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

『たのしい授業』9月号の反響
 「編集委員のおたより」を中心に(前編)

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


 『たのしい授業』について,毎月,主に編集委員からですが,た
くさんの感想をいただいています。でも,『たのしい授業』の「編
集委員会ニュース」欄で紹介できるのは,スペースのつごうで,ご
くごく一部。そこで,このメールマガジンで,そのほとんどの部分
をご紹介させていただいています。
 今回は,9月号の反響(前編)12人分のおたよりを紹介しま
す。かなり長文です。
 引っ越し騒動で,大変遅くなりました。すみません。
 なお,「おたより」は原則として原文のままです。表記などは統
一していません。


◇◇◇ 2015年9月号「まねできる図工・美術」 ◇◇◇

●肥沼孝治(埼玉,中学校・社会)
 9月号で,特に良かったのは,次の3点です。
◆(1) 〈創造性〉という名の呪縛(黒田さん)
 9月号の特集は「図工・美術」だったので,感想を書くものが見
つかるか不安でした。
 しかし,芸術の世界でも学問の世界でも,呪縛から解き放たれな
いと自由に研究できないということを再認識させていただいたと思
いました。
 歴史学の場合は,日本書紀の記述が「呪縛」で,考古学の編年が
「遠慮」しているのですが,図工・美術の場合にも〈創造性〉が幅
をきかせ,模倣の大切さがないがしろにされているようです。違う
分野ながら,共通の問題があると思いました。
◆(2) 学ぶ喜び(小原さん)
 人間は「学ぶ喜び」を見つけた時,ぐんと世界が素晴らしく思え
るのでしょう。
 それは,小学生でも,大学生でも,お年寄りでも同じこと。特
に,仮説実験授業は対応できる年齢の幅が,めちゃくちゃ広いの
で,「学ぶ喜び」をプレゼントしやすいことになります。
 1学期には《世界の国ぐに》が歓迎されました。2学期は《日本
歴史入門》でご機嫌をうかがいます。
◆(3)〈自分と違う意見を馬鹿にしない伝統〉を大切に(板倉さん)
 これは,いい話だなあと思いました。
 仮説実験授業をしていると,生徒たちの間でも自然とそうなって
きますが,フツーの生活の中では,けっこう(先生方の中でも)わ
かっていない人が多いと思います。
 そういう人は,勝手に自分の中で「正解」を決めていて,自らの
不安な気持ちを〈自分と違う意見〉を馬鹿にすることでバランスを
取ろうとしているように思われます。
 しかし,それは結局空しい努力です。実験によって真理が決まる
のですから,「人の意見を馬鹿にする必要」はないし,むしろ「自
分と違う意見を尊重する人」の方に,実験の結果(真理)は微笑む
と思うからです。

●河上温知(鳥取・岩魚釣り師)
◆学ぶ喜び 小原茂
 小原さんの文章はいつも刺激に満ちています。なかでも,大学で
の講義が終了したあと,学生のひとりが小原さんの講義に感動して
泣き出したというではありませんか。〈学ぶ喜び〉〈学ぶ意味〉を
こんなにもすてきな文章にまとめて発表した小原さんのすばらし
さ。
◆特集の〈まねできる図工・美術〉
 3つのプランのどれもが,読んでいると授業でやってみたくなる
のでした。退職しているのでいまのところ授業は無理ですが。
 これらの記事を読んでいると,なんだか隔靴掻痒的な気持ちがわ
いてきました。それは,文章とイラストだけという雑誌の制約が
あって仕方ないのかもしれませんが,どうしても作品の製作過程が
イメージしづらいのです。
 これだけネットが発達しているのですから,動画サイトなども活
用して,ある程度のイメージがつかめるようにできないものかと,
ふと思いました。
◆〈創造性〉という名の呪縛 黒田康夫
 美術教育に誰もがマネできるプランを発表している黒田さんの
「創造性」についての論文は,たいへん示唆に富んでいて読み応え
がありました。
 明日からの授業にすぐに役立つプランもときには必要だし,美術
教育に対してこれまでの常識を覆すようなこんな記事を読むこと
も,教師自身の教育力向上のためには大切なことです。
◆石墨を探して 和泉浩一郎
 〈結晶〉の授業をすると,いろんな結晶に注目するようにもなり
ます。
 以前,採石場へ結晶掘りに行ったりしたこともありました。そし
てショッピング街を歩いていると,買うわけでもないのに,結晶を
加工したアクセサリー店に立ち寄ったりすることもあります。
 和泉さんが訪ねていった先の元鉱山従業員の吉田さんが案内し
て,石墨探しに行く様子がいきいきと書いてあり,ちょっとうらや
ましく思いました。そして音調津鉱山が気になり,Google検索で
地図やストリートビューを見て,どのあたりだろうかと想像するの
はたのしい作業でした。
 さらに検索すると,この鉱山がある町の様子から学校や保育所
廃止になっていることや,高齢者が半数近くにもなり限界集落
なっていることなど,考えさせられることが多くみつかりました。

●小田富生(和歌山,農業)
 稲ネタで始まるのも今月でおしまいかと思いますが。間引かなけ
ればならないほど多く植えすぎた苗もすくすく成長し,イネ刈りの
時期を迎えました。ところが,このところの雨続きで,まだ田んぼ
に機械が入れる状況にありません。ようく見ると,黄金色に輝いて
いる稲の穂で,芽が出ている籾もあります。これは大変です。かと
いってなすすべがありません。ひたすら天を仰ぐのみです。
◆「『はらぺこあおむし』をつくろう」楽しく読ませていただきま
した。以前,支援学級を担当した時,『はらぺこあおむし』の絵本
から青虫とチョウを写し取り,それを拡大したものを作り,それに
クラスのみんなで色付けをしました。そんなこともあって,興味深
く読みました。ローラーでグラデーションの紙を作るだけでなく,
それを小分けして友だちと交換するというのがさらに楽しさをアッ
プしているなと思いました。工作ネタなら得意ですが,絵をかかせ
るというのはからっきしで,こういう特集があると絵が苦手の人は
救われるなあと思います。
◆「ほんのりシュワッと炭酸ゼリー」も良かったです。以前サーク
ルで,料理好きの人がプリン作りの資料を持ってきました。そのと
き,プリンは卵(卵黄)が原料だと知って,卵を原料にして「冷た
くして固めるがプリン」「温めて固めるのが茶碗蒸し」ということ
に気付き,驚いたことがありました。この記事で,寒天とゼリーの
違いがよくわかり,その良いとこどりの「寒天ゼリー」というのも
発売されていることもわかり,すごく得をした気分になりました。

●長崎平和(東京・塾講師)
 「何かを思い出すキッカケ」というものには色々あって,たとえ
ば〈匂い〉なんかはよく言われてますね。ぼくはラルフローレンの
オードトワレの匂いには1990年の夏を思い出すし,SAMURAI
WOMANの匂いは2001年の秋を思い出します。
 〈音楽〉もまた「何かを思い出すキッカケ」によくなります。
ルー・リードの『NEW YORK』を聞くと,《もしも原子が見えた
なら》が浮かびます。なぜなら,「《もし原》やったら,上と色々
と問題が起きるんだろうな」と思いながらも思い切ってやり始めた
とき,BGMでよく聞いていたのがそのアルバムだったからです。
◆そして,今回,小原さんの「学ぶ喜び」を読んだら,仮説実験授
業を初めて知って,そして『授業を楽しむ子どもたち』を読みあ
さって感動しまくって,「どうやったら上とケンカせずに仮説実験
授業をやれるか」ってェ計画を密かに練っていた,1989年のあの
頃の空気や思いや匂いなんかが一気によみがえってきたのでした。
文章も,実は「何かを思い出すキッカケ」になるんですねえ。
 今現在のぼくは小さな塾でバイトでちょこちょこっと授業を持た
せてもらっています。仮説実験授業やたのしい授業をやれる環境で
はとてもありません。それでも今回小原さんの文章読んでしまった
ので,また何かぼくの中で蠢き始めてしまいました。そんなこと
やってるから解雇され続けてきたのに,懲りない俺 (^^;)。

●長沼麗子(茨城,会社員)
 9月号は図工と美術の記事がたくさんあって,たいへんわくわく
しました。
◆横顔の版画
 ユニークな発想とシンプルかつ魅力的な作品の力に感動しまし
た。キミコ方式で髪の毛だけ描くというのがありますが,横顔の輪
郭だけでもその人の個性が見えるのですね。
◆秋の景色とジュース
 グラデーションが美しくて見入ってしまいます。コップのジュー
スもおいしそうです。子どもたちの感想文からもたのしく作品づく
りができたことが伝わってきます。
◆イントゥ ザ ワイルド
 最終回,残念です。私自身,現場で子どもたちと接していたとき
は,勉強嫌いにさせてしまったのではないか,と思うことがたびた
びありました。学ぶことの楽しさや学ぶことから得られる感動を伝
えたいという思いは今も持っていますが,実践はなかなか難しいで
す。七里夫妻からは勇気とパワーをたくさんもらいました。
◆学ぶ喜び
 女子学生の話,読んでいてうれしい気持ちになりました。関心の
なかったものや嫌いだったものが好きになるって感動的です。
 学ぶ意味や学ぶ価値のあることに気づけたら,学ぶことを心から
たのしめるのではないかと思います。
◆創造性という名の呪縛
 守・破・離の話が印象に残りました。模倣と創造について今まで
モヤモヤしていたことがすっきりしました。

●須崎正美(埼玉,定時制高・理,講師)
◆黒田康夫さんの「〈創造性〉という名の呪縛」
 本格的な美術教育の「模倣と創造」の論文です。教育現場には模
倣を軽視して,創造性のみを重視する傾向がまだまだあります。美
術教育はその典型かもしれません。黒田さんのように徹底的な模倣
の追求から創造性を生み出す実践がもっと広がっていってほしいで
す。「模倣と創造」の関係をきちんと捉えられていないから,今回
東京オリンピックパラリンピックの「エンブレム」騒動が起き
るのだと思います。
小原茂巳さんの「学ぶ喜び」
 短い記事ながら,「学ぶことの意味」の本質をついている記事だ
と感じました。たのしい授業がこんなにも〈学ぶ喜び〉や〈勉強す
る意欲〉を生み出しているのです。でも長く「たのしい授業」をし
ていると,こういうことに慣れ過ぎて,見逃してしまうことがあり
ます。そういう意味で,この記事はピリッと刺激を感じました。
◆三木淳男さんの「心から〈たのしい〉と思える授業を」
 私も週1日ですが,中学校の特別支援学級で理科の授業を担当し
ています。週1回の非常勤ですから,科学の授業(仮説実験授業)
のみをやっていればいいのですが,担任の先生はとても大変そうで
す。《ドライアイスであそぼう》は特別支援学級から生まれた授業
書なので,特別支援学級にはうってつけです。10年前の授業の様
子が生き生きと思いだされるのは,すばらしいことです。

橋本五郎(福島・民生委員)
◆「〈創造性〉という名の呪縛」を読んで,美術教育においても模
倣が重要であることに気づき,「模倣による美術教育の実践」をさ
れて成果を上げてきたことがよく分かりました。
 そして,「楽器の譜面通りに演奏できるようになること」や「お
気に入りの歌手の歌を同じように歌えるようになる」といった「手
本通りにできるようになる喜び」は音楽の世界では広く肯定的に認
められている。にも関わらず,美術教育の世界では,模倣すること
は認められておらず「模倣は悪」というイメージが定着している,
という論旨に,心から納得することができました。
 また,「〈模倣〉による教育法」が生まれる過程にも感動してし
まいました。「すでに美術への興味を失っている子供」「苦手意識
が刷り込まれている子供」「勉強そのものを拒否している子供」,
こうした「子供たちは,どんなことならやってくれるか」を考えに
考え続け,たどり着いた方法が「〈模倣〉による教育法」だという
ことにです。
◆「学ぶ喜び」も良かったです。「1学期を振り返って,楽しかっ
た事はなんですか?」という問いに,小学校1年生が,「おべん
きょう」と書いてくれたことに,素直に感動して記録を残した先生
も,その記録に感動して紹介してくれた小原先生にも,感動しまし
た。そして,喜びを感じるような本当の学びを実践していきたいと
思いました。
 「三角形の内角の和は180度である」を習った土橋くんが,ノー
トの見開き2ページに,さまざまな形の三角形を80個もびっしり
と描き,それぞれの一つ一つを分度器で計って「三角形の内角の和
は180度である」を確かめ,その真実に感動したというエピソード
にも感動してしまいました。
 そう,「三角形の内角の和は180度なんだ」と簡単に納得してし
まう場合がほとんどのような気がしますが,この違いはどこから来
るのでしょうか。教育法なんでしょうけれど。
◆「災害と人口」は,幾つかの災害後,人口増加率が急速に回復し
ているという傾向は分かりました。しかし,福島も簡単に同列に捕
らえてしまう論旨には納得できませんでした。追われるように故郷
を離れざるを得ない多くの人たちの存在が隠れてしまうからです。
人口を問題にするなら,そうした人たちの実態も,考慮したものに
して欲しかったです。

●実藤清子(埼玉・中理)
◆1.自分と違った意見を馬鹿にしない伝統を大切に 板倉さん
 「間違った意見」も馬鹿にしない,「少数派が馬鹿にされる論
争」は嫌い,「反対派の人びとも納得するような形で教育を考えな
ければならない」……「仮説実験授業を提唱した板倉さんの奥は深
い」と思いました。
◆2.「学ぶ喜び」小原さん
 みどりちゃんの「おべんきょう」
 土橋君の”変革”
 「ビートルズの英語の歌詞の訳
 三角形をたくさん書いてきてどれも内角の和が180°であるとい
うこと」をノートに書いてきてくれた。
 大学2年生の佳菜子さんの話,子供たちもすばらしいし,それを
受け止める小原さんもすばらしいと思いました。
◆3.〈創造性〉という名の呪縛 黒田さん
 「ルネサンスの工房がごくありふれた才能の持ち主にすぎない少
年たちが高い技術水準を持った職人へと成長した。他人の作品を模
写し,親方のデザインに従って仕事を進め,最終的に自身の絵画や
彫刻を創作するまで,一連の段階的進歩を経ることによって〈教え
込む〉ことができるものであった」……これは知りませんでした。
 「だから,学校教育は英語にしても数学にしても教え込んでいる
のである。」
 ただし,教えている先生は,工房の親方のように最後まで責任は
負っていない場合も多々ある。それが良かったりする場合もあるか
らむずかしいが。
 黒田さんは,美術という授業の作品つくりで,「模倣を大事にす
ることで,生徒の作品の完成型まで責任を負っている」という意味
ルネサンス的なのだと思いました。
 仮説実験授業をする先生たちも子供の評価をとりながら「その内
容に責任を負っている」。ヨーロッパでは美術館の絵の前で模写し
ている人達がいます。模倣の大事さの証拠でしょうか。
 「仮説実験授業の授業書つくりなどでは,どんなことが言えるの
だろう」と思ってしまいます。
◆4.「Into the Wild 」七里さん
 七里夫妻が醸し出す世界,それをなんだか懐かしく感じていました。

●飯田哲夫(山梨・教育委員会
◆ 9月号のテーマは「まねできる図工・美術」でした。今回,第
一に取り上げたいのは,今月のテーマの中心を論じた黒田康夫
「〈創造性〉という名の呪縛」です。
 模倣と創造をめぐる黒田さんの論文はまとまりがあり,論旨も明
快で説得力があります。美術教育の世界で自分の立場(「模倣によ
る美術教育の実践」)を,論理的な根拠にもとづき,鮮明に主張さ
れた論文になっていると思います。
 ここには,黒田さんの言葉を借りれば次の問題がありました。
 「人の真似=良くない」「自分の創作=素晴らしい」という価値
観(57ペ)
 黒田さんもいうように,これは「美術の話に留まらず」あらゆる
ところでかかわります。
 ここから技術指導をせず,一握りの子どもの創作に,「子どもら
しい」「個性的だ」と感動して,多くの子に,技術指導をせず,わ
たしは絵の書けない子というコンプレックスを与えている図工・美
術教育の現状があり,いまもあるわけです。
 松本キミ子さんはそこを批判し「キミ子方式」を提唱しました
(『絵のかけない子はわたしの教師』)。キミ子方式は,学び手で
ある子どもの支持を武器に美術教育界に挑戦しました。
 黒田さんも,子どもの声を根拠にしています。感想文には,自分
にもできるんだという喜びと達成感。次にもやってみたい,もっと
やりたいという学習意欲が素直に書かれていました。
*〔編注〕長編なので,以下,教育史上の問題点として指摘された
見出し語を中心に抄録。
○授業の価値は子どもが決める
○「模倣と創造」に対する間違った認識と価値観に左右され,混迷
する日本と日本の教育という問題
○作文教育にかかわってきたぼくの見解から見える微妙な問題
○技術だけを教えるおそろしさについて
もいい,と思います。すべて平均点の話です。
 本来,個々人が自分の力を測るのなら意味がありますが,平均し
○模倣の時代から自己表現の時代へ,そして戦後へ(作文教育史の
場合)
○美術教育の歴史から
○本当は重視されていた模倣
○子どもらしさ,純真さ,創造という神話
○大切なのは心を支える技術であって,心のない技術ではない
◆次に取り上げたいのは,三木淳男「心から「たのしい」と思える
授業を」でした。
 特別支援学級で,戸惑いながら,ときにうちひしがれつつ,でも
「たのしい」授業を求め,実践してゆく姿に感銘を受けました。思
い通りに動かなくても,子どもを責めず,子どもの心を読み取ろう
とすることで,道が開かれてきていることが見えるようでした。
《もう1つ感じたのは,授業記録を書いてみて,「子どもたちの発
言や反応に鈍感な自分」を発見してしまったことでした。テープを
聞き直してみると,子どもたちはさまざまな言葉をつぶやき,体で
も反応しているのに,それらを私がきちんと受け止めていないこと
がたびたびありました。90ぺ》
 この姿勢が「心から「たのしい」と思える授業を」支えていると
思いました。
 そして,あと4年半で退職というとき,それを思い出してこの記
事を書いている姿勢にとても共感します。ぼくもあと3年半で退職
なので。
◆その次は福島純子「『はらぺこあおむし』をつくろう」です。読
んでいて,「これは出来るな。きっと子どもたち喜ぶだろうな。
アートになるな。やりたいな」と思いました。色を楽しむこと。絵
を描くのでなく,絵を制作するという感じでセンスが磨かれると思
います。いろいろな応用が可能だと思いました。
◆次は,小原茂巳「学ぶ喜び」です。きちんと学力をつけることが
子どものためになるとか,わかる,できる喜びが重要だと,大人は
言います。だが,子どもはもっと本質的で質が高い。損得を超えて
いるのです。一年生でも学ぶことに喜びを見出し,それを与えてく
れる授業を忘れない。土橋君(なつかしい)が感動したもの,学ぶ
ことがこんなに楽しいことかと,感じたからでしょう。その普遍性
を伝えてくれました。
◆そして,最後というか,一番というか心に残った別格が,板倉聖
宣「〈自分と違う意見を馬鹿にしない伝統〉を大切に」でした。
 これを読むと,(あまり物事を深く真剣に考えていそうもない)
総理たちを馬鹿にしてはだめだ,と思いました。そこが板倉さんの
すごいところで,論争で勝ってもだめ,実験で勝つということで
す。国会中継を耳にして,総理,防衛大臣が国会論戦で追求されて
も,日本は変わらないと思います。どんな国民も納得できる理論を
提示できなければ,本当は変わらない……と思いました。
《これらの本(ガリレオの『新科学対話』とか『天文対話』)で
も,明らかに〈真理は論争で決まる〉んです。仮説実験授業では
〈真理は実験によって決まる〉んです。これは決定的な違いなんで
す》
《私は学生運動はやったりしたんだけど,少数派が馬鹿にされる論
争は大嫌いです》
《仮説実験授業のこれまでの伝統は,相手を馬鹿にしたり,間違っ
た子どもを馬鹿にするということを一切やりません》
《仮説実験授業は,そうした,「どんな子どもたちも十分納得でき
るような教育システム」を作ってきました。「今後ともそういう伝
統を大切にしていきたい,発展させていきたい」と思うのです》
 幾つも心に残したい言葉がありました。

●岡田克己(神奈川・小,校長)
★圧倒的によかったもの
◆〈創造性〉という名の呪縛
 ルネッサンス期の芸術家工房の様子がとてもよく分かり,しかも
思い描いていたイメージとまったく違っていたのにビックリ。きっ
と,日本の狩野派や運慶・快慶なども,職人集団によって組織的に
作品が制作されていたのでしょうね。
 まねることによって,技術を守ることによって維持された芸術と
いうことを実感しました。
◆〈自分と違う意見を馬鹿にしない伝統〉を大切に
 〈真理は○○で決まる〉と読み比べて,内容というより,編集の
仕方次第でこんなに印象が違うんだということを実感し,とておも
しろかったです。
★よかったなあというもの
◆学ぶ喜び
 「飛び出した土橋君」には何度泣かされたことか。でも,また今
回も涙ちょちょ切れでした。土橋君も小原さんもスゴイ!
◆シンプルな線でオシャレな横顔……
 これぞ究極の簡単芸術。できばえのすばらしさに感動!
◆千里の道も笑顔から
 いい意味で,「割れ鍋に綴じ蓋」だな。

●日吉 仁(佐賀・小学校)
◆三木淳男さんの「心からたのしいと思える授業を」がよかったで
す。授業記録そのものももちろんいいのですが,最後の追記がいい
ですね。10年前の授業のことがビデオを再生するように思い出さ
れるのは,もちろん授業記録を書いたからこそでしょうけど,授業
記録を書きたいと思える授業があったからこそ,ステキな記憶とし
て残っているわけですよね。
 10年経っても良循環というのはすごいです。
◆黒田康夫さんの「〈創造性〉という名の呪縛」には,「そうだよ
なあ」と思うところがいっぱいありましたが,「その教材の教育目
標は何か」のところが一番好きでした。中でも音楽を例に引いたと
ころは,その通りと思えました。音楽では,楽譜通りに演奏した
り,歌ったりすると高く評価されるのに,図工ではそうではない…
これって意外と気づかれていないすごい矛盾点だと思いました。ぼ
くみたいに46歳になっても,「見たままに写実的に絵を描きた
い」という欲求はあります。それを満たすような教材を開発してい
る黒田さんの仕事はすばらしいと思うし,その仕事を応援していき
たいと思いました。
◆福島純子さんの「『はらぺこあおむし』をつくろう」,由井宏幸
さんの「シンプルな線でオシャレな横顔の版画を作ってみまし
た」,二宮聡介さんの「グラデーションで描くジュース/秋の風
景」のどの資料もすぐにできそうで,これからの季節にピッタリだ
と思いました。ぼくは,今年2年生なので,福島さん,二宮さんの
プランは,運動会の後にやってみます。
◆小原さんの「学ぶ喜び」もいいですね。算数の研究授業を見る機
会があったのですが,それがわかっても「楽しい」とか「学んでよ
かった」と思えないと,全然うれしくないんだなあと瞬間的に思い
ました。小原さんの資料に出てくる子どもたちの感想を見ている
と,「学んでよかったと思えるかどうか」をいつも気にしていたい
と強く感じます。
◆日吉資子さんの「ほんのりシュワっと炭酸ゼリー」は,本当に簡
単でおいしいので,ぜひ多くの人にやってみてもらいたいと思いま
す。
◆吉村安裕さんの「このカードを当てるのはあなた」は,手品好き
のぼくとしては,興味をそそられる資料でした。しかも,コンビ
ネーションに口上付きというすばらしい親切さ。ぼくのレパート
リーに必ず加えます。(笑)

●上澤篤司(東京・小学校)
(8月号の表紙の「5つの点で円を作る」という問題,廊下掲示
ていたところ,自分の担当学年以外からも多くの反響がありまし
た!ありがとうございます!)
 9月号で特に印象に残った記事は以下の3点です。
◆由井宏幸さん「横顔の版画をつくってみました」
 美術関連の記事が多い中で,自分にとっては一番お世話になるこ
とが多いかなと感じました。大きな行事にむけて,専科教員でな
く,担任がアイディアを出して指導する場面に活用できそうと思っ
たからです。
 普段自分が図工を担当していないからこそ,指導するなら,普段
苦手意識がある子にこそ,「上手くいった!」という達成感を味わ
わせたいと思います。由井さんの記事にはそういう思いをもたせる
工夫がいくつも組み込まれている気がしました。
・自分の横顔がモデル→誰でも自分には最も興味がある。横顔には
コンプレックスを感じる人がいない(気がする。)
・写真を撮ってなぞる→技術にあまり影響されない
・太い丸刀で彫る→技術にあまり影響されない(不器用な子でも大
丈夫)
・裏彩色する→技術に左右されない個性が出る行事に関連するもの
だからこそ,家に持ち帰っても保存してもらえるものにしたい。
 さっそくやってみたくなりました。
◆日吉資子さん「ほんのりシュワッと炭酸ゼリー」
 簡単ゼリーづくりは何度も紹介されているのを目にしていたの
で,私にとっては「ものづくりの完成型」と勝手に感じていまし
た。
 ところが,そこに足し算のアイディアでなく,全く別の方法から
違うものを考えた日吉さんを尊敬します。私だったら,「氷を使わ
ない」なんて考えもしなかったと思います。(つめたいから,美味
しいと勝手に決めつけていたので。)
 合わせて,味や食感にも探究の心で向かっているところが素晴ら
しいと思いました。寒天とゼラチンの違いはどこかで聞いたことが
あったものの,覚えられていませんでした。こうして,理由と結果
を読むとよく理解できます。
◆三木淳男さん「心から『たのしい』と思える授業を」
 特別支援学級の子供たちとのやりとりが,温かく描かれていて,
読み物としても,とても楽しく拝読しました。
 疲れている時だからこそ,自分が納得できることをしっかりや
る,という考えが「そうだよな〜」と改めて教えられました。(そ
れも戦略的に徐々に対応し,工夫されている様子が勉強になりまし
た)
 10年前の1時間がビデオのように再生できるという話,ジー
としました。そんな教師生活を送りたいです。そんな一瞬一瞬を積
み重ねていきたいです。《ドライアイスで遊ぼう》自分でもやって
みたくなりました!

◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯
仮説社のメールマガジンをお読みくださいましてありがとうござい
ます。弊社発行の月刊誌『たのしい授業』や書籍をお読みくださっ
ている読者のみなさまや,仮説実験授業を実践,あるいはこれから
実践してみたいと考えている方などに,弊社の新刊情報を少しでも
早くお知らせできたらと思い,このようなメールマガジンを発行し
ています。そのほかにも,『たのしい授業』の情報,新しい実験器
具やおもちゃの情報もいち早くお伝えできればと思っています。当
メールマガジンへのご要望などございましたら,下記メールアドレ
スにお寄せくださいますようお願いいたします。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
〔仮説社PublicRelations〕仮説社 販売部(荒木)
hanbai(アットマーク)kasetu.co.jp
〒169-0075 東京都新宿区高田馬場2-13-7
TEL 03-3204-1779  FAX 03-3204-1781
仮説社HP→http://www.kasetu.co.jp/
Facebookhttp://www.facebook.com/kasetusya#!/kasetusya
You tubehttp://www.youtube.com/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━